線虫の侵入すなわち感染は
線虫の侵入すなわち感染は、線虫を保持したカミキリの後食の際に起きる。後食とは、羽化後の性成熟していない若いカミキリによる、6-7月頃にマツの若い枝の樹皮を摂食する行動である。後食による傷口から樹体内に侵入した線虫は、主に樹脂道を通って速やかに樹体内に分散し、柔細胞と材内に少量存在する菌類を摂食しつつ増殖する。7-8月頃には、感染したマツの外見には異常はないものの、樹脂滲出が停止し穿孔性昆虫に対する防御力が弱まる。後食によって性成熟したカミキリはそのようなマツに誘引されて飛来し、産卵する。8-10月には全身の針葉が褐変して枯死するが、柔細胞を摂食していた線虫は餌を材内に蔓延する青変菌に切り替えて増殖を続ける。カミキリの幼虫は樹皮下の組織を摂食して成長し、材内に蛹室を作って越冬する。
越冬したカミキリ幼虫は5-6月に蛹となる。そのころ線虫は蛹室周辺に集まり、体内に脂質を蓄え口を持たない耐久型幼虫(カミキリではなく線虫の幼虫)が現れる。カミキリが羽化するとともにこれらがカミキリ新成虫に乗り移り、腹部第一気門などから気管内に侵入する。ただし線虫はカミキリに寄生するのではなく、分散に利用するだけである。血体腔に侵入することもない。材を脱出したカミキリは後食を行うが、乗り移り後一定の期間が経過した線虫は後食の際にカミキリを離脱して再びマツに侵入する。
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線虫がマツの枯損を引き起こす詳細なメカニズムは未だ完全に明らかになってはいない。線虫の摂食刺激によって生じる仮道管のキャビテーションや漏出細胞質による閉塞、分散した線虫による全身的な過敏感反応、線虫の持つ酵素や有毒物質、共生細菌の生産する毒素などがその候補に挙げられている。
線虫を保持したカミキリが健全マツ林分に侵入すると、少数のマツが後食を受けて感染・発病し、枯死する。枯死したマツの中で次世代のカミキリと線虫が生育し、放置すれば翌年は林内で発生した線虫保持カミキリが次々と周囲のマツを感染させ、多数の枯死木が発生する。翌年はさらに多数のカミキリが発生し、枯れるべきマツがなくなるまでこれが繰り返される。